ころもです。
お盆の季節。
祖先の墓参りに出かける人、終活真っ最中の人、その手伝いに駆り出される人、様々な人が様々な問題にぶち当たっていることでしょう。
長寿社会が加速する今、空き家問題から親の認知症、遺産相続と、トラブルの話は数限りなく噴出。
9月3日発売の『PRESIDENT』では、ありがちなトラブルについて全国130人の弁護士から回答を得て紹介しています。
さっそく、見てみましょう。
どんなトラブルが多く、どう対応すればいいのか
よくある「老後・相続トラブルベスト16」
〜 ランキング発表 〜
1位 兄弟姉妹間の遺産分割の割合によるトラブル 83人
2位 使徒不明な消えた遺産に関するトラブル 59人
3位 親の介護をしたことを主張するなど寄与分に関するトラブル 51人
4位 生前贈与などの特別受益についてのトラブル 39人
5位 長年相続手続きがされておらず、複雑になっている事例 29人
6位 偏った内容の遺言に関するトラブル 27人
7位 分けられない相続財産に関するトラブル 25人
8位 相続人間の話し合いが困難な事例 13人
9位 遺言の効力に関するトラブル 12人
10位 後日負債が判明するなどの相続放棄に関するトラブル 10人
11位 後妻と前妻の子どもの間での遺産分割トラブル 9人
12位 相続人に認証の方がいる事例 4人
13位 不動産の使用者と相続人が違うことによるトラブル 2人
13位 ゴミ屋敷や止まなど財産の押し付けあいに関するトラブル 2人
13位 内縁の妻に関するトラブル 2人
16位 養子縁組に関するトラブル 1人
16位 愛人など親族でない人との間でのトラブル 1人
16位 位牌、仏壇、墓などの承継者についてのトラブル 1人
これは(弁護士ドットコムの協力を得て、2018年6月29日〜7月12日にNTTコルムオンライン・マーケティング・ソリューションが実施し、130人から回答を得たもので、20項目のうち、よくある事例を3つ選んで頂いた)というもの。
(出典:『PRESIDENT』2018年9月3日号)
上記内容からわかることは、とにかく「お金」ということ。
お金が絡むと様々なトラブルが発生するということに尽きます。
では、解決法などはあるのでしょうか。
見ていきましょう。
お金がからむと人間関係はより複雑になる
【1位】
兄弟姉妹間の遺産分割の割合によるトラブル
〈解決方法〉
「根本的な解決方法は、非相続人が遺言書を残すことです。自筆証書遺言では、『すべて内縁の妻に与える』など、その他の相続人の遺留分に配慮していなかった場合、『そもそも父は認知症だったのではないか。書かされたのではないか』という理由で、相続人が遺言の無効を主張する可能性があります。きちんと公証役場で公正証書遺言を作ることが大切です」(森田弁護士)
ちょっと一言)
自筆証書遺言は無いよりはマシですが、それが有効にならない可能性を考えれば、結果「無いに等しい」ということになります。やっつけ遺言ではなく、きちんとした意識のあるときに公証役場まで足を運んででも遺言を作る、これが大事です。
【2位】
使徒不明な消えた遺産に関するトラブル
〈解決方法〉
厄介なのは少額を徐々に引き出しているパターン。
「生活費を親の代わりにATMで引き出した」と言われれば反論は難しくなる。「親の管理能力がないことを証明するには医療記録などの間接事実を積み重ねるしかない。しかし、相続人を訴える側は傍にいなかった人間のわけですから、立証するにも厳しい立場です」(森田弁護士)
どんな対策が有効か。
「判断能力に問題がある両親の財産の管理については、後見人制度で、専門家である第三者を後見人につけたほうがいいでしょう」(森田弁護士)。
ちょっと一言)
第三者だから安心安全と言い切れないところに、また新たな相続問題があるように思いますが、とりあえずはこれぐらいしか解決方法がないということか。
【3位】
寄与分に関するトラブル
〈解決方法〉
寄与分とは、親の看病をしていたなど、親の財産の維持または増加に寄与するような貢献をした相続人がいる場合、遺産分割の時に評価しなくてはいけないという制度のこと。だが、介護をしても「扶養の範囲」とみなされると、寄与分は認められない。
どんな場合に認められるか。
「基準としては、非相続人が要介護2以上の状態であることが一つの目安になります。例えば、ヘルパーさんを雇わないといけないのに、雇わずに自分で介護をした。その分浮いた費用を寄与分として評価する。寄与分とはそのような制度です。ですから、週末だけ介護するというレベルでは難しい」(森田弁護士)
ちょっと一言)
失った時間をお金に換算できるかどうか。その意識が両者にどれほどあるかということも大事かも。介護は当たり前じゃない、当たり前じゃないことをどれだけ思いやれるか。なんだか考えれば考えるほどに解決が難しそう。
【4位】
特別受益についてのトラブル
〈解決方法〉
「きょうだいのうちひとりだけが、扶養のレベルを超えた経済的な支援を受けていたケースがあります。そのときに受けた利益のことを『特別受益』といい、それを勘案して、遺産分割する必要があるのです」(森田弁護士)
よく争われるのが、不動産購入資金や結婚式費用、学費の援助だ。
「相談者は、きょうだいに母の遺産分割を請求したが、妹は『相談者は結婚の際に結納金や結婚式代金、新婚旅行の費用、新築建物の資金を親に出して貰っているので、それらは特別受益として考慮されるべきである』として、なかなか同意しない」(有満俊昭弁護士/さいたま新都心有満法律事務所)
森田弁護士によると、援助額が合計で1000万円以上になると、トラブルは起こりやすいという。
ちょっと一言)
そもそも遺産分割を平等にしなければいけないということに「不平等」がある、ということも言えるわけで、強制でなけば特別受益を受けるに値する「特別な感情、あるいは何か出来事」というものがあったという評価、それによる特別受益だったということで理解してもらうことがあってもいいような。しかしそれが感情問題に発展すれば、客観的証拠で話し合いをするしかないのか、厄介きわまりないな。特別受益をしたい、受けたいということであれば、少額でね、ということか。
そのほか、
■知らない間に親が借金をしていた場合
〈回答〉相続放棄がオススメ(借りていたお金は金融機関から督促通知が送られてくる)
■離れて暮らす親が実家をゴミ屋敷にしていた場合
〈回答〉相続財産については、どういう財産があるのか確認する作業が必要だが、ゴミ屋敷だとその判断に大変な労力がかかり、家事などの問題が起これば相続人の責任となる。
■親の再婚や恋愛でのトラブルの場合
〈回答〉後妻にすべて相続させるといった遺言が作成されてしまったら、相談者は「遺留分減殺請求」を主張し、調停で争う。
などなど、今は本屋さんにいけば簡単な法律知識も得られるので、法律知識に普段から触れておき、風通しのいい人間関係というのか、きょうだい関係を築けるのなら築いておくというのが理想的ではあります。
しかし冠婚葬祭や年末年始、お盆ぐらいでしか顔を合わせることのない、ほぼ赤の他人状態の関係という付き合いが大半でしょうから、そういう絆を横でつなぐのはかなり至難でしょう。
となれば、揉めることは99%間違いないという前提で、相続させる側が早め早めに準備し、伝えるべきは伝えて安心させるなり問題解決していくのが一番争いが少なく済むように思います。
いずれにしろ、死後のことなど考えたくない。
遺産相続など、もめるほどのお金はない。
という考えの親は大問題です。
「死」はすべての人間に訪れるし、遺産相続はあってもなくてもそれなりに揉めるものと心得て、最後の子供孝行として頭がしっかりしているうちに話し合いの機会を設けたり、雑談のなかで切り出すぐらいの配慮をもって欲しい、そう思います。
ではまた。
(出典・引用元:『PRESIDENT』2018年9月3日号より)