ころもです。
平成と令和を挟む心地よい時代の風に身をゆだねていたら、あっという間に大型連休が終わってしまった…。
人生の不条理や理不尽さを嘆いているあなた。
明日からの生きる活力をどう捻出するか、そんな作業に取りかかっている人も少なくないでしょう。
人生を謳歌するために効率よく仕事をこなし、自由に使える自分のための時間がもっと欲しい。
けれど現実はどこまでもシビア。
労働環境は連休前と何ひとつ変わらないどころか「やるべき仕事」が山積している。
そんなあなたにこそ実践して欲しい「集中力と生産性を高める」最強の働き方を今回はご紹介します。
複数のことを同時に処理するのは脳の構造的に無理だった!?
あれもこれもやらなくちゃ。
気持ちばかりが焦って、結局なにひとつうまく処理できない。
誰もが経験のあることでしょう。
しかしマサチューセッツ工科大学の神経学者アール・ミラー博士によれば、
「人間が認識することができる範囲には限界があり、頭にとどめておける思考と記憶の量は決まっている」
というのです。
つまり、脳の構造を考えれば”複数のことを同時にこなすということはそもそも不可能”だということになる。
そんなぁ〜ですよね?
なんでも、タスク(複数の処理)を変えるたびに脳の神経回路網が行ったり来たりするため脳に余計な負荷がかかって作業を遅らせるだけでなく、間違いを誘発することにもなるのだそう。
結局、仕事の処理能力というのは時間の長短にかかわらず、ひとつの作業にどれだけ集中していられるか、そこにかかっているということです。
具体的にどういう方策があるのか
ひとつひとつみていきましょう。
◆ひとつのことに集中することができない人は次の2つを試す
〜誘惑を遠ざける〜
・集中力を阻害するものを排除、ことにスマホは見えるところに置かない。
〜集中力が途切れたら体を動かす〜
・あちこち思考が脱線ばかりするときには短い散歩がオススメだといいます。気分も上向き、ふたたび集中できるようになると。
◆ やるべきことを先延ばしにしてしまう人は…
進捗(しんちょく:物事が進みはかどること)を報告する相手を見つけましょう。
報告する相手は友人でも家族でも同僚でもいいので、はかどり具合を報告する相手を見つける。そうすることで仕事に対する責任感がわき、モチベーションがアップするといいます。
◆ 現実的な内容や量を具体的、またシンプルに書き出す
時間管理術のエキスパートであるジュリー・モーゲンスターンは、1日の仕事の終わりに翌日やるべきことを5〜8項目くらいの一覧にして書き出すことを薦めています。
その際のポイントは、現実的な内容と量を具体的、かつシンプルに書くようにと。
◆「パレートの法則」を意識して仕事に臨む
パレートの法則というのはイタリアの経済学者ビルフレド・パレートが確立したものですが、
「売り上げの8割を占めるのは2割の顧客」というような、経済における全体の数値の大部分は一部の要素が生み出しているという理論のことで「80:20の法則」とも呼ばれています。
・最も成果に結びつく仕事を優先しているか?
・作業効率のいい時間に集中して仕事をしているか?
そういったことを常に意識することで仕事の生産性はおのずとあがるというのです。
◆ 仕事をする場所は、仕事の進め方とおなじくらい重要
作業空間は生産性に多大な影響を及ぼすといわれており、時間管理術のエキスパート、モーゲンスターンによれば、
デスクが散らかっている原因の7割以上は片付けのスキルではなく時間管理能力にある
といいます。
耳の痛い話ですが、仕事終わりの10分を翌日の準備にあてることが、デスクを片付ける最も簡単な方法だといいます。
確かに準備が整ったデスクで朝を迎えれば、思考も生産性もあがることは想像できます。
◆ メールはおそろしく時間を食ってしまう、厄介な生き物
メールを片付けたことで満足感を得られるけれども、それは重要な案件を先送りにして簡単な作業に時間を費やしただけに過ぎないということ。
前述のモーゲンスターンはメールを一読したら、
「いますぐ返信すべきもの」と「よく考えてから変身すべきもの」の2グループに分類し、
2分で対応できるメールなら直ちに取り掛かって、それ以外は後回しにして再度時間を作り、数日の熟考を要するメールなら、受領したけど改めて返信することだけをとりあえず伝え、決して放置しないことといいます。
感情的な文言があるメールの場合は→送信した当人に口頭もしくは電話で返答するほうが早いと。理由は”声の調子と個性が相手に伝わったほうが誤解も生じにくい”からだとか。
◆ 「座る・立つ・歩く」の作業スタイルを取り入れる
長時間座りっぱなしでは作業効率も下がるので、ときおり椅子から立ち上がって周囲を歩き回る。そうすることで脳の血流も改善、認識力も向上する。
コーネル大学人間工学科のアラン・ヘッジ教授は、
「嫉妬・スタンド・ストレッチ・サイクル(3S)」といった、座る、立つ、歩くを組み合わせた作業スタイルを推奨しています。
これにより仕事の生産性があがり、肉体的にも精神的にも健康でいられる。
◆ 無力感に襲われたら「垂直型から水平型に」呼吸を変える
無力感に襲われると呼吸が浅く、また速くなって脳の酸素量が不足し、ストレスを更に感じて思考も乱れてしまいます。
こんなとき、
臨床心理士で呼吸法インストラクターのベリサブラニッチは、”脳内の血流が最大化して処理能力も高まる水平型呼吸”を薦めます。
---水平型呼吸の実践方法---
①姿勢よく座り、肩の力を抜いてリラックスする
②鼻から息を吸い、お腹をふくらませる
③息を吐きながら、お腹をへこませる
④最初から繰り返す
脱力して緊張をとくことで、呼吸も楽になり思考力がアップ、しかも慢性的な肩や腰の痛みも解消すると。
いかがでしょう。
特別むずかしいというものは無いですね。
しかしだからといって誰にでもすぐに実践できるものであるとも言い難いですが、試す価値はあると思います。
限られた時間を有効に使うということは、ちょっとした工夫をほどこすかどうか、それに尽きるのかもしれません。
気ばかりが焦ってあれもこれもやろうとしてミスを誘発し、より多くの時間を費やしてしまうということは多々あります。
ならば、一つのことに集中し、それをやりきってまた次のひとつに集中していく。愚直なようでも、人間の脳の構造からいえばそれが早道ということなのかもしれません。
ぜひ、お試しを。
(出典:COURRIER Japan 2019年6月号)