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高齢者や頑固な父親に運転免許の返納をさせるテクニックとは

 

 

ころもです。

 

高齢者の交通事故が増えています。

アクセルとブレーキの踏み間違い、逆走…

 

自分から率先して免許を返納してくれる場合はいいですが、大抵は「自分の場合はまだ大丈夫」と高をくくって一向に返納する気配がない。

 

しかし事故が起こるまでは、何でも「大丈夫」な状態なのですね、これが。

 

そしていざ事故が起きてから、あの時に返納させておけばと、こういうことになる。

 

ストーカーにしても隣人トラブルにしても、ケイサツというものは何か「コトが起こらない」と動いてくれないことが多く、ましてや高齢者の免許返納について個々に対応などするわけもなく、こればかりは家庭内でどうにかするしかないというのが現状です。

 

ではどうすれば「頑固な」父親を説得することができるか。

今回はそんな話です。

 説得ではなく、「納得」してもらうことが重要

 

認知症の専門外来と在宅医療を行う医療法人ブレイングループの理事長・長谷川嘉哉氏は、

 

「大きな理由は『前頭葉の衰え』です。前頭葉機能は40代からゆっくりと低下し、50歳前後で大きく衰えるのが一般的。理性的な判断がしづらくなるとともに感情の抑制が苦手となるため、周囲から見るとどう考えてもまっとうな意見でもなぜか受け入れない、いわゆる『頑固』という状態になると考えられます」

と証言。

 

明星大学心理学部准教授で臨床心理士の藤井氏も、人は年を取ればとるほどに、自分は何でもできるという感覚、いわゆる有能感なるものが高まり、自分のことを客観視する力(メタ認知能力)は低くなる、と語ります。

 

長いこと家族を養ってきた父親が、その養ってきた家族からの注意を素直に受け入れるということは確かに相当ハードルが高いことかもしれません。

 

ではどうすればいいのかというと、

 

説得しようとするのではなく「納得してもらおう」という意識で気持ちに寄り添うことが重要だといいます。

 

 

〜運転免許の返納問題について〜

 

『損する気づかい 得する気づかい』の著者でコラムニストの八嶋まなぶ氏は、

 

「男は何歳になっても人から尊敬されたい生き物なので『もう高齢だから』といった言葉はプライドを傷つけるだけなのでNG。『率先して免許を返納する人って、社会のかがみでカッコいいよね』と、心をくすぐる形で伝えるのが正解です。『自分は流行の最先端を取り入れ、社会にも役立つ人間』という前向きな気持で自主的に返納してもらいましょう」

と助言、また、『大人力検定』の著者でコラムニストの石原壮一郎氏は、

 

「伊藤四朗さん、高木ブーさんら免許返納をしたり、黒柳徹子さんのように更新をしなかった芸能人を『さすが、何かを成し遂げた人は違う。尊敬できるなぁ』と家族みんなで褒めるのも効果的。直接『お父さんも返納すれば?』とは言わず、あくまで間接的に伝え、自分で決断するという形にうまくお膳立てしてあげましょう」 

と提案します。

 

なるほど、

 

しかしこれで返納してくれるレベルの頑固さなら苦労もないわけで、もっと早くに運転を諦めて貰う方法はないのか。

 

これについては先述の石原氏は、

 

「半ば強引に取り上げる場合でも、大人な姿勢のコミュニケーションが必要。危険の大きさを説明する前に、父親のこれまでの人生がどれだけ素晴らしいかを力説し、自尊心をくすぐりましょう。その上で『こんな立派な人生を台無しにするリスクを背負うのはもったいなさすぎる』と伝えれば、納得度が大きく変わってくるはずです」

といいます。

 

さらに奥の手として、

 

「息子からでなく『孫』から伝えるというテクニックも有効。そのとき『危ないよ』と注意させるのでなく『怖い』とおびえる姿を見せるようにお願いしましょう。『自分の大切なものを守らなければ』という本能を刺激する作戦です」 

 と語ったのは八嶋氏。

 

説得ではなく納得

 

分かる気がします。

 

北風と太陽の話を思い出しますね。

 

しかし説得ではなく納得といっても、その先が心もとない。

 

免許を返納したがらないのは頑固だからという事以上に、現実問題としてそれが必要であるという切実な事情があるということであり、そこを抜きに免許を返納させようとしてもやはり説得力に欠けるだけでなく、無責任ということになってしまいます。

 

個人的には、その先の未来がどうなっていくのかまで踏み込んでいくことが大事なのではないかと、そう思うわけです。

 

自尊心をくすぐるだけでなく、不安感をなくしてあげることが重要。

生活の中からクルマが消えてしまう。

 

クルマが消えて何が困るのか、

 

どう困るのか、具体的な不安を聞き出して、その不安を払拭、または軽減してあげるということが現実的な返納に最も近いコミュニケーションの取り方ではないかと考えます。

 

買い物の補助、選択肢が他にもあるという情報の提供や共有。

こういった地道なフォローなくして返納だけを求めても、それはいっときは理解を得られても、のちに違う問題が発生してくると思います。

 

ワイドショーなども利用して、自然に話を免許返納に誘導するというのも視覚に訴えかけ、コメンテーターの言葉なども客観的な意見として取り入れることもできるので、これは自分たちだけの問題じゃないという大きな視野にもっていくこともできそう。

 

生活のためだけじゃなくクルマを乗ることを楽しみ、生きがいとして位置づけている高齢者も多いと思うので、そういう側面も踏まえてコミュニケーションをとることがまずは大事かもしれません。

 

何でも「起こる」までは日常です。

 

 

ではまた。

(出典元:『週プレ』2019年6月17日号)