ころもです。
自分の親に手術が必要となったとき、あなたはどうしますか。
それが必要ならやるしかない。
医者が言うんだから絶対にやる。
しかし高齢者の場合、「手術そのものがリスク」になることもあるということを忘れてないでしょうか。
人生は「点」ではなく「線」なのだと考えるとき、手術という「点」のみを見ていたら、その前後に続く「線」が立ち行かなくなるということもあるわけです。
高齢者の場合、手術そのものを乗り越えることができたとしても、術後の合併症で命を落とすケースも後を絶たないというではないですか。
そんななか、今後参考にすることもあるかもしれない記事が本日発売の『週刊現代』に掲載されていましたので、ご紹介させて頂きます。
「手術をしない」ことも立派な治療法
70歳を超えると患者の状態の個人差というものは非常に大きくなるといいます。
それはそうでしょう。
他に持病があるかないか、家族はいるのかいないのか、経済格差もあるでしょうし、体力差、さらには気力の差と、個体差は若い人達以上に複雑かつ多様になっていくばかりと思います。
若い人にとっては手術が最良の選択であっても、高齢者の場合はそう単純じゃない。
〜2015年の国立がん研究センターの調査以下〜
年齢別 早期がん(ステージ1)
で治療しなかった患者の割合
病名 40〜64歳 65〜74歳 75〜84歳 85歳以上
肺がん
(非小細胞)1.6% 2.8% 7.1% 25.4%
胃がん 1.9% 3.0% 5.9% 19.7%
大腸がん 1.6% 2.6% 4.6% 18.1%
食道がん 5.2% 4.8% 6.9% 19.5%
膵臓がん 4.3% 7.9% 21.4% 37.2%
乳がん 0.7% 0.7% 1.4% 5.1%
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年齢別 進行がん(ステージⅣ)
で治療しなかった患者の割合
病名 40〜64歳 65〜74歳 75〜84歳 85歳以上
肺がん
(非小細胞) 8.9% 13.7% 30.2% 58.0%
胃がん 8.5% 12.5% 24.8% 56.0%
大腸がん 4.6% 6.7% 14.7% 36.1%
食道がん 5.8% 7.3% 15.8% 33.3%
膵臓がん 11.3% 15.7% 31.5% 60.0%
乳がん 5.2% 6.6% 8.3% 19.4%
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(参考元:『週刊現代』2018年9月8日号)
「手術そのものがリスク」であることを忘れてはいけない
以下、参考になると思いますのでご紹介させて頂きます。
年齢別 「やってはいけない手術」
各病気のボーダーラインはここだ
肺がん
〈年齢/手術の可否〉
60歳:◯ 65歳:◯ 70歳:◯ 75歳:△ 80歳:☓ 85歳:☓ 90歳以上:☓
【解説】
75歳以上は片肺全摘などの大掛かりな手術はせず、放射線や抗癌剤を中心に。
胃がん
〈年齢/手術の可否〉
60歳:◯ 65歳:◯ 70歳:◯ 75歳:◯ 80歳:△ 85歳:△ 90歳以上:△
【解説】
80歳以上でも早期なら手術で治癒できる。身体の負担を考え部分切除にとどめる。
大腸がん
〈年齢/手術の可否〉
60歳:◯ 65歳:◯ 70歳:◯ 75歳:◯ 80歳:△ 85歳:△ 90歳以上:△
【解説】
進行度が低ければ90歳以上でも内視鏡手術が可能。人工肛門は管理が難しい。
食道がん
〈年齢/手術の可否〉
60歳:△ 65歳:△ 70歳:△ 75歳:☓ 80歳:☓ 85歳:☓ 90歳以上:☓
【解説】
手術は身体にかかる負担が大きい。70歳以降は放射線+化学療法(抗がん剤)。
膵臓がん
〈年齢/手術の可否〉
60歳:△ 65歳:☓ 70歳:☓ 75歳:☓ 80歳:☓ 85歳:☓ 90歳以上:☓
【解説】
他の臓器も大きく摘出するため「予後」が非常に悪い。死期を早める可能性も。
前立腺がん
〈年齢/手術の可否〉
60歳:☓ 65歳:☓ 70歳:☓ 75歳:☓ 80歳:☓ 85歳:☓ 90歳以上:☓
【解説】
放射線治療で十分治療できる。手術と違い、尿漏れやEDなどの副作用もない。
乳がん
〈年齢/手術の可否〉
60歳:◯ 65歳:◯ 70歳:◯ 75歳:◯ 80歳:△ 85歳:△ 90歳以上:△
【解説】
他のがんと比べて予後は良好。高齢者は進行が遅いので乳房も温存できる。
脳動脈瘤
〈年齢/手術の可否〉
60歳:△ 65歳:△ 70歳:☓ 75歳:☓ 80歳:☓ 85歳:☓ 90歳以上:☓
【解説】
動脈瘤が5ミリ以下であれば放置しても問題ない。70歳を超えて開頭手術は避ける。
脳腫瘍
〈年齢/手術の可否〉
60歳:△ 65歳:△ 70歳:△ 75歳:△ 80歳:☓ 85歳:☓ 90歳以上:☓
【解説】
70歳以上で糖尿病など持病がある場合は放射線や抗がん剤を選択したほうがいい。
狭心症
〈年齢/手術の可否〉
60歳:◯ 65歳:◯ 70歳:△ 75歳:△ 80歳:☓ 85歳:☓ 90歳以上:☓
【解説】
冠動脈バイパス術は、腎機能が低下した80歳以上の人はやらないほうがいい。
不整脈(心房細動)
〈年齢/手術の可否〉
60歳:◯ 65歳:◯ 70歳:△ 75歳:△ 80歳:☓ 85歳:☓ 90歳以上:☓
【解説】
75歳を境に心臓手術のリスクが上がる。カテーテルを使うと負担は少ない。
脊柱菅狭窄症
〈年齢/手術の可否〉
60歳:△ 65歳:△ 70歳:△ 75歳:☓ 80歳:☓ 85歳:☓ 90歳以上:☓
【解説】
手術には体力と術後のリハビリへの気力が必要となる。70歳がボーダーライン。
変形膝関節症
〈年齢/手術の可否〉
60歳:△ 65歳:△ 70歳:△ 75歳:△ 80歳:☓ 85歳:☓ 90歳以上:☓
【解説】
人工関節の手術は最後の手段。残り寿命を考えて、75歳以上の手術は避けたい。
◯ → 根治を目指した手術が可能
△ → 身体への負担を考え手術は慎重に
☓ → 手術はしないほうがいい
(出典・参考元:『週刊現代』2018年9月8日号)
以上、参考資料として知っておくことは決して無駄にはならないと思います。
上尾中央総合病院の心臓血管センター特任副院長の一色氏は、
「日本は90歳でもペースメーカーの手術をしますが、海外では手術の対象になりません。日本の医者は治る可能性があるのなら、高齢であってもなんとか治療しようとするのです。高齢者であっても、心臓の手術は、正直やってみないと正解がわかりません。手術をしたことで寿命を延ばした人もいるし、合併症を起こして寝たきりになった患者さんもいます。
これが心臓手術の悩ましいところですが、確実に言えるのは、80歳を超えて全身状態がよくないのに、無理やり手術で心臓を治そうとするのはやめたほうがいいですね」
と語っています。
健康のためなら死んでもいい、ということのないよう、ケースバイケースという柔軟な姿勢で大事な判断をしていきたいですね。
ではまた。
(出典・参考元:『週刊現代』2018年9月8日号)
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