この国は正直であるより「いい人」であることが求められる気がします。
安室奈美恵さんの引退に関して古市憲寿さんが個人的なコメントを率直に話しただけでも、
え? 批判するわけ!?
といった空気になってしまうとしたら非常に怖い。
感じたことを何でも言えばいいということでもないけれど、感じたことを何も率直に言えない空気というのはもっと怖い。
安室奈美恵さんのファンである古市さんだからこその感想があっていいはずだし、それは徹頭徹尾その人ひとりの感想として聞いてあげていいはず。
批評する自由まで奪って欲しくはない
社会学者の古市憲寿さんは安室奈美恵さんのファンなのですね。
まずそのことにびっくり。
音楽と結びつかないイメージが勝手にあったので。
それはまあいいとして、その古市さんがダウンタウンの松本さんの『ワイドナショー』で取り上げられた安室さんの来年9月引退の件で、
「安室さん今すごく神格化されていて、歌の帝王みたいな感じじゃないですか。でもそうじゃなかったですよね」
とコメント。
みんなほめすぎな気もしていてと前置きし、
「正直、昔の方がいいなっていう曲もあるんですよ。声の伸びだとか高音とか歌い方とか」と先日発売されたベスト盤の感想を述べ、
「それもちゃんとひっくるめて評価されないと、たぶん逆に本人も辛い。今が最高だって言い過ぎちゃうと。絶対に昔のほうがよかったっていう部分もあるはずで、『NO』って言えない空気はちょっと気持ち悪いと思う」
と発言。
この件を日刊スポーツは「安室奈美恵の”神格化”に古市憲寿氏「気持ち悪い」とタイトルをつけて記事を書いていたのですが、意外にもというのか、予想通りというのか、この古市氏の番組内での発言には多くの人が擁護、そして共感しているのですよね。
ころもも、古市氏の意見に共感できました。
気持ちはわかります。
ファンにしてみれば、来年の9月以降安室さんが芸能界にいなくなり、歌手としての活動をもうリアルタイムで観ることも聴くこともできないのですから、これまでのCDや何やらが命綱のような気分にもなる。
ただ‥‥
引退の発表があるまで、そのコアなファン以外の人たちがどれほど安室奈美恵さんのことを日々考えたり、思い出したりしていましたか。
1日のうちに何度曲を聴きましたか?
と問われたら「う〜ん、ごめんなさい」という方がほとんどじゃないでしょうか。安室さんは確かに一時代を築いた中の一人ではありました。
そういう意味では数人の歌姫の中の一人に属しているといっても許されるのかもしれません。
そして、
引退となれば惜しい、けれどそれほどに惜しいと思う人の歌をどれだけファンじゃない人たちは聴いていたのかと聞かれたら、古市さんがいうように、
みんなほめすぎのような気もしていて
という素直な感想のひとつも出てくるのも致し方ない。
個人的には安室さんのスタイルや踊り、昔の歌はわりと好きでしたね。
でも、小室さんが提供していた時代の歌は一度聴いただけでも忘れられないインパクトのものが多かったものの、テレビ露出がなくなってから何だか難しい歌を歌うようになって、「覚えられないぞ、こりゃ」になってしまい、ビジュアルとしての安室さんを楽しんでしまうようになっていました。
「古市さんは思ったことをノンフィルターで口にした結果の炎上発言なので、あざとさがなくて笑える」
「功績はでかいけど、周りが馬鹿騒ぎすぎ」
「彼の口調は嫌いだが意見には同意できる」
「言いたいことはわかる」
「引退すると神格化されるのが日本の芸能界」
古市氏の意見に賛同の声が意外に多かったです、ヤフコメでは。
「批判どころか批評も許されない集団ヒステリーになって欲しくない。
かつての浅田真央みたいに。
逆にアンチが増える結果になる」
といった意見もあり、これには深くうなづきました。
浅田真央さん、確かに批判が許されないような空気がありましたね。
安室さんは賢い女性と思うので、この浮かれすぎたメディアに困惑しながらもしっかりこの一年を締めくくっていくでしょう。
芸能界の場合、始める決意より辞める決意のほうが難しいと思うので、その判断を自ら下したということが、歌より何より一目置かれるところかもしれません。